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1985年 「拍手を送る」  杉本監督

 昭和六十年秋(1985年)、名工大卓球部1部昇格を達成する。
 ほんとうによくやってくれた、うれしい限りである。私には、この前代未聞なる部員諸君の功績をかなり真実に近いところで評価できるような気がしてならず、今全く素直に喜ぶことができる思いである。
 既に実証されるとおり、私は自他共に認める名前ばかりの監督であり、卓球について諸君に教えることのできることなどは何一つとして持っていない。あの激戦を極める選抜を超えて、わずか六大学にしぼられる1部の中に、したがって諸君自身の努力で到達したことに意義大きいものを感じるのである。思えば、3部の低迷からこの快挙に至るまでには、説明しきることのできない苦心惨憺たるものがあったはずである。いかに苦しい状況下に置かれようと、石にかじりついてでも前進してきた諸君の意地と根性を垣間見る思いがする。
 工大は一日にして成らず、私には先輩から後輩へ、そのおかれた責任が今見事なまでに果たされているような気がしてならない。
 人間稼業の中、なぜそうなのかわけのつけいる隙間もなく、さらに好むと好まざるとにかかわらず、自身の限りをかけて困難と正面立ち向かわねばならぬ機会は誰にとっても必ず存在する。この状況下、健全なる心身は不可欠であり、時には的確な判断に基づく勇気さえ必要である。多くの場合、これに対応できる人格の形成は、ほとんど自身の限界的な努力のもとにおける結果としてしか生まれ得ないような気がしてならず、当然のことながら、かかる限界に挑む過程には机上だけで説明できない貴重な教訓が、それも厳しすぎるほど鮮明に残されていくものである。私には、一つの願望達成がどのような意味を持つのか、少なくともこれを理解できるまでに成長する部員が徐々に生まれつつあるのを教えられるようである。
 いつの間にか深い秋に落ち着く工大のキャンパス、枯葉舞う歩道に季節が風のように過ぎてゆく。振り返ることができるなら、この夏ほど眩しいものはない。
 どこまでできるか工大生、青春の限りを尽くして頑張る諸君の堂々たる健闘に今大きな拍手を送りたい。